研究概要 |
本研究では,高齢者の転倒の主因である,(1)平衡機能の低下,(2)全身反応時間の低下,(3)下肢筋力の低下を考慮し,IT(パソコン)と転倒予防トレーニングを結合させた健康づくりプログラムのモデルケースを作成するとともに,"住民自身による健康づくり"を目指した事業を推進し,その効果を検討することを目的とした. まず,旧産炭地域および都市部在住の高齢者(平均年齢:66.8±8.9歳)79名を対象に,バランス能力テスト,パソコンを用いた反応速度テストを実施するとともに,転倒自己効力感の評価を行い,それらの関連性について検討した.その結果,反応速度とバランス能力および転倒自己効力感の関連性が示された.また,測定結果をフィードバックする際に,8項目からなるバランス能力テストの結果を年齢尺度に変換した「転倒予防年齢」を算出した.これにより,暦年齢との比較でバランス能力や身体機能を容易に評価することができ,健康づくりの動機づけや運動教室の導入の段階をスムースに行えるものと思われた. 次に,旧産炭地域在住の高齢者(66.3±4.2歳)20名を対象にパソコンを用いた反応速度と転倒予防のトレーニングを12週間にわたって実施し,転倒予防に貢献すると考えられる身体機能,転倒への恐怖感,身体活動量について教室前後で検討した.トレーニングは,平衡機能,下肢筋力および姿勢調整能力の改善を導き,その結果として転倒予防につながる可能性が示された.本教室は転倒予防を前提として実施したが,同時に教室受講後,各地域での健康づくりの担い手として,健康づくりリーダーの養成を兼ねた.来年度以降は各校区を主体とする健康づくり事業へとつなげる予定である. 以上の結果は,旧産炭地域における高齢者のヘルスプロモーション事業の支援に関する基礎資料として利用できるものと思われる.
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