研究概要 |
生活習慣病のリスクファクターの一つに運動不足という因子がある.健康増進のためには一過性に運動を行うというよりも,運動習慣を身につける必要性が高い.しかし,トレーニングにはしんどい,面白くない,退屈といったマイナスのイメージがあり,生活の中にトレーニングを取り入れる運びにならない.本研究は,バーチャルリアリティ(VR)映像を用いてトレーニング時にどのような環境を作れば飽きずに運動を継続できるのか,あるいは,主観的運動強度がより低く感じられるのかについて検討することを目的としている. 平成15年度は,大学生の体力調査を行い体力のどの項目が劣っているのかについて予備調査を行った.対象は情報科学部の大学1年生の350名である.東京都立大編の日本人の体力標準値2000の19歳標準値と比較し,持久力の指標である最大酸素摂取量,12分間走,筋力を示す握力,背筋力,バランス能力の指標となる閉眼片脚立ちが劣っていることが示された.そこで,持久力とバランス能力をトレーニングできるVRシステムの作成を行い,VR映像が運動に及ぼす生理心理的効果について実験を行った. 被験者(14名)に文書にて同意書を得た後,2人1組のペアで自転車漕ぎ運動とバランス運動をVRあり条件とVRなし条件でそれぞれ6分ずつ運動を行った.その結果,主観的運動強度(RPE)は,両条件とも相違がみられなかった.しかしVRありではVRなしに比較して,自転車のペダル回転数が増加し,その結果心拍数も増加するという結果が得られた.主観的には,同じ強度の運動をしていると感じているが,実際はより高い運動を意識せずに行っており,VR映像の効果としては,運動促進の効果があるのではないかと推察される. 今年度は単発の実験であり,継続効果が検討できていないので,今後トレーニング実験を行い,どの程度継続してVR映像の効果がみられるのかについて検討を行いたい.
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