昨年度の研究結果により戸建住宅地の高齢化は今後さらに深刻になることが予想され、それに伴って居住者が減少し、空き家・空き地が増加することが考えられた。また、居住者の住宅及び住宅地の住環境に対する評価は否定的なものが多く、その結果による問題点が明らかになった。これらの結果とともに、昨年度以前までに継続的に行ってきた研究の結果をもとに、高齢化に伴う郊外戸建住宅地の課題と今後の住環境整備のあり方に関する研究成果を整理し、まとめた。大きくは、以下のような3点の課題があげられる。 (1)これからは、郊外戸建て住宅やそこに住む人々が今までに抱いていた認識を変えなければならない。歩いて行ける範囲に商店を設ける、近隣とのつきあいを深められるような活動を行っていく、マンションにあるような「フロント機能」(留守中の宅配便、郵便物・新聞預かり等)、留守中や高齢者のための家や庭の管理といったサービスを整備していく、というような高齢化に対応した対策を行っていく必要がある。 (2)居住者が高齢期を迎えて住宅を手放す際には多くの選択肢が考えられる。同時に空き家や空き地の活用方法も多くの選択肢がある。空き家や空き地の活用方法について検討し、実現できるようにしていくとともに、空き家バンクのようなシステムに加え、一般的に情報を提供できるようなシステムを整備していく必要がある。 (3)郊外戸建住宅地においては、地域同士のつながり、住民同士のつながり、時間とのつながりをどのようにつけていくかが課題である。これらのことを実現するためには、戸建住宅地を縦割り行政の対象としてではなく、全体として「つながり」があるものとして捉えるとともに、全体をコントロールしていく組織が必要になる。また、これらに高齢者自身が参加できる仕組みも必要である。
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