第1子出生タイミングが自然のなりゆきに任せられる傾向の背後にある要因に迫るためインタビューを実施した。インタビュー対象者はK市にある小学校の1〜3の保護者で、F小学校では保護者懇談会(5月)の当日に校内の一室にて5名、Y小学校では有志による親子行事の当日(7月)に屋外にて10名の協力を得て実施した。その結果を総括すると、質的研究を通してもなお第1子出産を自然のなりゆきに任せることの理由は見出せなかった。換言すれば、個人が出産を自らのライフプランに積極的に組み込む自己決定能力に乏しい実態が示唆されたといえる。この自己決定能力があれば、計画的に高齢出産を避け、理想とするだけの子どもを産みやすい。この意味において、ペアレンティング教育が重要である。これを推進する1つの可能性として、今年度から本格稼動している厚生労働省の少子化対策事業の「中高生と赤ちゃんのふれあい事業」の場等に、充実したプログラムを提供することに今後の展望が見出された。 高齢出産忌避以外にも育児にともなう体力的・精神的負担が、理想とする子どもを産まない理由として指摘されていた。これは各種子育て支援策により解消すべく取り組まれている。筆者は地域における子育て支援の実態を探るべく、その拠点となる子育て支援センター、保育所、幼稚園、保健所、福祉事務所、社会福祉協議会、図書館や育児支援グループ等で提供されている情報・活動を調べ、担当者へのインタビューを実施した。全体的に個別にできる範囲の子育て支援を実施しており、例えば電話相談の窓口をそれぞれで設けているものの相談時間や曜日が制約されていたり、他業務と兼務であったり、実質的なサポート効果への期待は薄い。取り組みやすい支援にとどまることなく、必要とされる支援を提供するためには、それらを統括する機関と各種拠点のさらなる連携が不可欠であり、そのあり方については今後の検討課題となろう。
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