平成16年度の研究結果によると、理想の年齢差できょうだいを産まなかった理由は、自然のなりゆき、不妊、育児に精一杯、経済的理由の順であった。今年度は、「精一杯な育児をいかに楽しむことができるのか」を解消することが希望するだけの子どもを産む意思決定につながるということに注目して、親支援について文献やインターネットを通じて情報収集した。なかでも1980年代にカナダで開発され1987年からカナダ全土で導入されているノーバディーズパーフェクト(NP)プログラムに注目した。NPは親自身をエンパワメントし、仲間作りを支援するという本質的な子育て支援策として注目できる。秋に4日間のNPファシリテーター養成講座に参加し、多くを学んだ。 養成講座受講後に、カナダのバンクーバーを4日間訪問し、カナダの子育て支援関連施設5ヶ所を訪問した。NPプログラムのみならず、地域子育て支援ネットワークの拡がりに触れ有意義であった。幼稚園・保育所・児童館という施設を拠点とした日本の子育て支援と異なり、地域の一般の家屋が子育て支援の場として用いられ未就園の子連れ親子が気軽に立ち寄ることのできるドロップイン活動は親子の居場所かつ息を抜ける場所として魅力的であった。 また昨年度の研究結果によると、今後の出産予定に際しての考慮事項として夫の協力を指摘する人に理想と現実の子ども数とに2人の差がみられていた。夫の協力が出産の意思決定に際しての1つのキーコンセプトになっているなかで、本研究では協力的とされる父親インタビュー(スノーボールサンプリング法による)を実施し、モデルとなる父親像の共通項の析出を試みた。9人の父親からのインタビューを試みた結果、実際にどれだけ育児に関与しているかということよりも、母親の育児負担をリアルに理解しているかどうかという点が1つのポイントとして析出された。望まれる父親モデルを提示することにより、より協力的な夫婦関係の構築に研究者として寄与することが今後の課題である。
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