本研究の目的は、障害や疾患をもつことによる生活への影響を、身体的な側面のみならず社会的な側面にも重点をおき、相互の関連性を考慮しながら、構造的に整理・把握することにある。具体的には、薬害HIV感染者において、HIV感染という健康被害を受けたことによる身体や生命への影響、社会生活面への影響、精神面への影響について要因を抽出し、相互の関係を分析して整理し、疾患・障害・健康被害の影響を構造的に把握することを目的とした。 3ヵ年計画のうち初年度は、既存資料や調査結果の検討と関係者へのヒアリング、新規調査の準備・検討を行った。2年度目は、全国のHIV陽性者を対象にして実施した療養生活と社会生活に関する調査の結果を分析した。3年度目は、この調査結果のうち薬害HIV感染者と性的接触によるHIV感染者とを比較しながら結果を分析し、その特徴を整理し、疾患や障害、健康被害の発生が、本人および家族の生命や生活、人生に対しどのような影響を及ぼしたかを図式化した。 疾患や障害の影響は、身体的側面への影響は評価しやすく、従来のQOL研究もここに偏る傾向があったが、実際には日常生活や中長期的な生活・人生に対しても影響を及ぼしている。本対象においても、既存の家族関係や、婚姻、出産といった新たな家族形成、地域や職場での人間関係形成、就学や就労などのキャリア形成への影響がみられており、今後も縦断的な研究を行うことで、長期的な生活水準への影響を検討していく必要があると考えられた。
|