食物アレルギーにおける植物性食品間の交差反応性の要因として、植物性食品に普遍的に分布する分子内にキシロース残基やフコース残基を有するアスパラギン結合型糖鎖の存在が示唆されている。そこで、本研究ではそのアスパラギン結合型糖鎖がIgE抗体の共通エピトープとして機能する可能性について、その糖鎖の構造面からの解明を目的としている。本年度は、これまで分子内のアスパラギン結合型糖鎖がIgE抗体との結合に関与することを提示してきた大豆アレルゲンGly m Bd 28Kについて、その糖鎖の構造解析を行なったのでその成果について以下に報告する。 大豆アレルゲンGly m Bd 28Kから、ヒドラジン分解によりアスパラギン結合型糖鎖を切り出し、N-アセチル化後、得られた糖鎖を2-アミノピリジン(PA)にて蛍光標識し、逆相及び順相HPLCにて各々のPA化糖鎖を単離した。各々のPA化糖鎖について、HPLCによる二次元マップ、MS、MS/MS分析、各種エキソグリコシダーゼ消化、スミス分解により、糖鎖の構造解析を行なった。その結果、Gly m Bd 28Kの糖鎖は、Manα1→6(Manα1→3)(Xylβ1→2)Manβ1→4GlcNAcβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc(M3FX):Manα1→3Manα1→6(Manα1→3)(Xylβ1→2)Manβ1→4GlcNAcβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc(M4FX):Manα1→6(Manα→3)(Xylβ1→2)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc(M3X)=66.7:19.9:13.4の比率で存在することが明らかになった。 以上の如く、本研究により本アレルゲンの主要な糖鎖構造はM3FXであること、さらにはこれまでに報告の無い新規のアスパラギン結合型糖鎖として、M4FXの存在を明らかにした。これらGly m Bd 28Kに存在する全ての糖鎖構造は植物に特徴的な複合型であり、この事実は、本アレルゲン由来のアスパラギン結合型糖鎖がキシロース残基やフコース残基のアレルゲン性への関与を明らかにするための最適な材料となることを示すものである。
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