研究課題
食物アレルギーにおける植物性食品間の交差反応性の要因として、植物性食品に普遍的に分布するキシロース残基やフコース残基を有する複合型のアスパラギン結合型糖鎖の存在が示唆されている。本研究ではその糖鎖がIgE抗体の共通エピトープとして機能する可能性について、単糖レベルでの構造面からの解明を目的としている。本年度は、大豆アレルゲンGly m Bd 28Kの糖鎖構造解析の際に得られた複合型のPA化糖鎖を利用して、大豆アレルギー患者血清中のIgE抗体と結合する糖鎖構造を解明するための分析方法の確立を試みた。IgE抗体とPA化糖鎖の結合性の検討は、糖鎖を固定化抗原とすることは困難なため、複合型糖鎖を有する糖タンパク質とIgE抗体との結合におけるPA化糖鎖の影響を阻害ELISA法により行った。即ち、糖タンパク質を固定化し、次いで予めPA化糖鎖と反応させたIgE抗体を添加し、その阻害率を求めた。その結果、コントロールとして用いた複合型糖鎖を有する各種糖タンパク質では低濃度でIgE抗体との結合が著しく阻害されたのに対し、遊離のPA化糖鎖では高濃度においても阻害は認められなかった。この事実は、IgE抗体との結合に、阻害物質中に存在する共通の糖鎖が関与することは示されたものの、本方法は遊離型のPA化糖鎖では抗体との親和性が低下することや、ペプチド部分の有無による立体構造の変化などにより、単糖レベルでの解析には不向きであることが示唆された。そこで現在、遊離のPA化糖鎖をIgE抗体と未反応のタンパク質と結合させ、そのネオ糖タンパク質とIgE抗体とを直接反応させるべく、ネオ糖タンパク質を調製中である。一方、交差反応への糖鎖の影響を検討する目的で、各種植物性食品素材からタンパク質成分を抽出・濃縮し、上述の糖鎖に特異的な抗体を用いて、食品中の糖タンパク質成分を特定した。次年度、これらの特定成分とIgE抗体との反応性を検討し、糖鎖の交差性への寄与率を明らかにする予定である。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
Biochim.Biophys.Acta 1675,1-3
ページ: 174-183