研究課題
植物性食品間における食物アレルギーの交差反応の要因として、特定のアスパラギン結合型糖鎖の関与が示唆されている。本研究は、その糖鎖のアレルゲン性について構造面からの解明を目的とし、既に、大豆の主要アレルゲンであるGly m Bd 28Kの糖鎖構造を明らかにしている。本年度は、アレルゲン性を有する糖タンパク質の糖鎖部分が共通エピトープ構造として機能するか否かの検討を中心に行った。12種類の植物性食品素材より抽出したタンパク質成分のうち、アレルゲン性への関与が示唆されている複合型の糖鎖に特異的な抗体である抗ペルオキシダーゼ抗体およびヒイロチャワンタケレクチンを用いて検出された約40種類の糖タンパク質に着目し、それら糖タンパク質と食物アレルギー患者血清中のIgE抗体との反応性をイムノブロットにより検討した。その結果、約1/3の患者において、上記成分のほとんどがIgE抗体と交差した。さらに、小麦や大豆タンパク質を二次元的に分離して抗体結合成分を解析したところ、タンパク質部分は共通するが、特定の糖鎖の結合の有無による多形性成分間において、上述の抗体およびレクチンにより認識される成分のみがIgE抗体と結合することが明かとなった。また、検出された糖タンパク質の糖鎖は、その組成分析ならびに構造解析結果からも分子内にフコースおよびキシロース、もしくはキシロース残基のみを有することが示された。これらの結果は、あるグループの患者においては、フコースやキシロースなどの単糖が構成単位となる特定の糖鎖が血清中のIgE抗体との結合に必須であり、それらが植物性食品間の交差反応におけるIgE抗体の共通エピトープとして機能することを示す。本研究の成果は、これら共通抗原として機能する糖鎖は植物界に普遍的に存在することから、糖鎖が共通エピトープとなる患者に対して、減感作療法などの治療や診断に役立つ情報を提供するものである。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
J.Agric.Food Chem. 53・9
ページ: 3658-3665