研究課題
本研究は、食物アレルゲン取り込み経路である消化管粘膜のバリア機能を高めてその透過を防ぎ、アレルギーを予防するという作業仮説のもと、腸管のモデルとなるCaco-2細胞単層膜に対する卵アレルゲンovalbumin (OVA)の透過抑制活性を指標にアレルゲン腸管透過抑制成分の探索および解析を行った。アレルゲン腸管透過抑制成分にはペプチド系とポリフェノール系の2タイプがあった。ペプチド系活性成分として、Trp、PheおよびTyrのエチルエステル(OEt)およびこれら芳香族アミノ酸のGlyをC末端に持つジペプチドを明らかにした。Trp-OEtは10^<-6>M付近で最も強い活性を示した。Caco-2単層膜に対する透過抑制機作の検討を行った結果、Trp-OEtはエネルギー依存的輸送(トランスセルラー経路による輸送)におけるアレルゲンの透過を抑制することが強く示唆された。ペプチド以外のアレルゲン腸管透過抑制成分をターゲットとし、植物性食品から検索を行った。特に活性の高かったオールスパイス、コリアンダー、タラゴンおよびタイムから活性成分を単離した。NMRおよびマススペクトルによる活性成分の解析の結果、これらの活性成分をpimentol (オールスパイス由来)、rosmarinic acid (タイム由来)、Iuteolin-7-Ο-β-glucuronide (タイム由来)、quercetin-3-Ο-β-glucuronide (コリアンダー由来)およびrutin (タラゴン由来)と同定した。これらの成分は10^<-4>〜10^<-6>Mで活性を示し、共通のベンゼン環オルトジフェノール構造が活性に関与していることが推定された。本研究はポリフェノール類に既知機能(抗酸化性)とは異なる特徴が併存することを示す最初の例である。
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