我々は、これまでに発芽玄米中のタンパク質含量および組成、特にアレルゲンタンパク質について解析し、精白米および玄米に比べて、発芽玄米中の可溶性画分に主要アレルゲンタンパク質がほとんど存在しないことを明らかにした。15年度は、発芽玄米におけるアレルゲン含量の減少機構の解明を目的として、発芽玄米の各製造工程についてアレルゲンの量的変化を解析した。 白米、玄米および発芽玄米から、また、発芽玄米の製造工程(発芽、加熱、乾燥)における各段階の試料から、塩可溶性タンパク質を1M NaClで、総タンパク質を1% SDS/1% 2-MEで抽出した。各抽出液に含まれるタンパク質をSDS-PAGEにより、14-16kDaアレルゲンについては、モノクローナル抗体を用いたイムノブロットおよびELISAにより解析した。 総タンパク質のSDS-PAGEにおいては、3種の米粒中の主要貯蔵タンパク質に関して顕著な差は確認されなかった。しかし、イムノブロット解析では、発芽玄米中で14-16kDaアレルゲンのバンドが消失していた。また、塩可溶性画分のSDS-PAGE、イムノブロットおよびELISA解析では、発芽玄米には14-16kDaアレルゲンがほとんど含まれないことが示された。そこで、製造工程の各段階での14-16kDaアレルゲンの量的変化を検討したところ、発芽後に僅かに減少し、その後の加熱工程で顕著な減少が見られることが明らかになった。また、玄米を発芽させずに加熱した試料においてもアレルゲンが減少していることが確認された。以上の結果より、発芽および加熱工程がアレルゲンタンパク質の低減化に関与していることが示唆された。
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