これまでの研究から、茶葉に含まれるカテキンの抗酸化性が、金属イオンの添加によって影響を受けることを明らかにしている。また、ある特定の金属イオンは、カテキンの吸収スペクトルおよび酸化電位に変化を与えることもわかっている。そこで、本研究では分光学的および電気化学的手法を用いて、カテキンの酸化反応に及ぼす金属イオンの影響、およびカテキンと金属イオンとの錯形成反応について調べた。 加電により、金属イオン添加後のカテキンの酸化反応の変化を調べるために光ファイバー型分光器を装備した電気化学アナライザーを用いた。なお、電極表面上での分光測定を可能にするため、厚さ0.5mmの薄層光電気化学セルを用いた。実験で用いたカテキンは、(-)-エピカテキン(EC)、(-)-エピガロカテキン(EGC)、(-)-エピカテキンガレート(ECG)、(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)の4種で、金属イオンはこれまでの研究でカテキンとの錯体形成が認められたCu^<2+>、Fe^<2+>、Fe^<3+>、Zn^<2+>、Al^<3+>の5種を用いた。 電圧を掃引しながらスペクトル測定を行った結果、いずれの電圧においてもカテキンの顕著な酸化ピークは認められず、掃引中の吸収スペクトルについても変化が認められなかった。また、分光学的実験から、カテキンと金属イオンの錯体形成能を調べた。見掛けのモル吸光係数を用いて錯体生成定数を決定した結果、EDTAと金属イオンとの錯体生成定数に対してかなり小さい値ではあったが、他の金属に比べて銅イオンや鉄イオンに高い値を示すことが明らかになった。また、カテキンの中でもEGCGに最も高い錯体形成能が認められた。したがって、金属イオンの添加により、カテキンの酸化において活性な部位(水酸基)に金属イオンが結合し、カテキンの酸化が起こりにくくなっていることが示唆された。
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