ポリフェノール類は、その機能性について多くの研究が行われ、生体に対する様々な作用が報告されている。しかしながら、他の栄養素に及ぼす影響などについては不明な点が多い。ポリフェノール類の錯体形成能や凝集沈殿効果などの化学的性質を考慮すると、ポリフェノールが生体必須元素や有害金属、微量栄養素などの代謝過程に大きく影響を与えていると考えられる。そこで、昨年度に引き続き、カニュレーション法を用い鉄吸収に及ぼすカテキンの影響について検討した。ラットの頚静脈および胃にカニューレを挿管固定し、それぞれ採血用、および試料投与用とした。試料は、鉄として5mgに相当する硫酸第一鉄、または硫酸第一鉄にカテキン0.2mgを加えたものを0.5mlに調整した。術後回復期間を設けた後、ラットに試料を投与して経時的に採血を行った。採取した血液は遠心分離を行い、血漿より鉄吸収の指標として血清鉄濃度を測定した。硫酸第一鉄およびカテキンを投与した群は、試料投与15分後および30分後において硫酸第一鉄のみを投与した群に比べ血清鉄濃度が高値を示し、試料投与15分後においては、両群間で有意な差が認められた。しかし、血清鉄濃度の経時的変化より曲線下面積を求め、鉄の吸収について検討したところ、硫酸第一鉄およびカテキンを投与した群は、硫酸第一鉄のみを投与した群と比較し有意な差は認められなかった。このことから、鉄の摂取量が多い場合、カテキンは鉄吸収を阻害せず、むしろ鉄の吸収速度を促進する可能性が示唆されたが、カテキンが鉄吸収に及ぼす影響について考察するためには、他の栄養素が存在する場合における検討が必要であると考えられる。現在、鉄濃度を変化させた場合のカテキンが鉄吸収に及ぼす影響の変化について検討中である。
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