制限給餌によって発現パターンが異なってくる遺伝子を網羅的に解析する目的で、DNAマイクロアレイの実験系を立ち上げた。本年度は、DNAマイクロアレイによる目的遣伝子のスクリーニング系の構築を目指し、野生型マウスと時計遺伝子Clockの変異マウスを対象として、肝臓での遺伝子発現の比較を網羅的に行った。その結果、CLOCK分子によって発現制御されている遺伝子のスクリーニングに成功し、論文として発表した。 給餌性のリズム形成機構が、光による体内時計のリズム形成機構のように、進化的に保存されているのか否かを検証する目的で、概日時計機構が分子レベルで解明されているショウジョウバエを用いて、ショウジョウバエにおける給餌性リズム形成機構の存在を調べた。光による時計制御機構とは異なり、ショウジョウバエでは、哺乳類で見られる給餌性リズム形成が見られないことを示し、論文として発表した。以前から、哺乳類においても、眼の網膜には、個体と独立した時計機構が存在している可能性が示されてきた。そこで、網膜の時計に支配されていると考えられている、メラトニン合成の律速酵素、NATの日周発現が、制限給餌によって影響を受けるか否かについて検討を行った。ショウジョウバエの場合と同様に、ラット網膜におけるNAT発現も、制限給餌の影響を受けないことが判明し、哺乳類に見られる給餌性のリズム形成機構が、進化的にも最近になって獲得された性質である可能性を論文に発表した。 給餌性リズム形成の時刻情報の入力系として、摂食に伴って内分泌されるインスリンである可能性を考えた。そこで、薬剤投与により糖尿病モデルマウスを作成し、給餌性リズム形成に及ぼす影響について検討した。その結果、時計遺伝子発現に対して、部分的な影響は認められたものの、内因性のインスリンが存在しない状態においても給餌性リズムの獲得が認められ、インスリンが必要不可欠な入力シグナルではない可能性を論文に発表した。
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