研究概要 |
これまで,森林はネイチャーゲームなどの場として利用される例は多数存在するが,森林そのものを題材として森林が持続可能な地球環境の維持に果たす役割を取りあげた学習機会は少ない。障害者に対してはさらに限られ,視覚障害者に着目すると,複数の盲学校教師への聞き取り調査から,視覚障害者が森林へ出向いて活動する機会が少ない。本研究では,森林科学を体系的に学習するための優れたツールである樹木年輪を用いて,障害者そして健常者が分け隔てなく森林の機能について学ぶための教材を開発することと,教材を使用した野外教育の実践的研究をとおしてその教育効果について評価することを目的とした。 【触覚教材】の開発:17年度は,樹木年輪を触察することのできる触覚教材の対象樹種を2種(クヌギ・ヨグソミネバリ)増やし,教材の枚数も大幅に増やして触覚年輪体感キットを充実させた。なお,この教材については現在国内数団体から作成依頼が来ている。 【聴覚教材】の開発:本システムで作成した年輪幅音源は,昨年筑波大学附属盲学校の高校2年生を対象にした生物の授業で実際に教材として使用したのに引き続き,2005年9月に開催されたヨーロッパ年輪研究会でも発表し,その国際的な認知を得るとともにその新規性および有用性について評価を受けた。その際,聴覚教材のシステムや音の改良に活かすことのできる情報や,コメントなどを集約することができた。昨年度の授業結果については全国視覚障害理科教育研究会誌で公表した。 【野外学習会】の実施:昨年度に引き続き,視覚障害者向け野外体験講座を8月および10月の計2回実施し,アンケート,静止画・動画による観察記録を元にその効果を解析した。本年度は,昨年同様の日帰り企画に加えて1泊2日の日程でドラム缶を用いた炭やき体験講座をはじめて実施し,評価を行った。企画の成果については2006年4月に開催される日本森林学会で発表する予定である。
|