本年度は、基礎調査として、(1)観察・実験からみた生物教育カリキュラムの調査と分析、(2)生物教材に関する学習者の実態調査を行い、さらに(3)安全教育と関連させた反応時間を調べる実験教材、(4)動物園を利用した動物の行動に関する学習を支援するデジタル教材、(5)身近な植物の葉のつき方を調べるための教材開発を行なった。 (1)の生物教育カリキュラムの調査では、第二次世界大戦後の中学校の教科書に掲載されている観察・実験を分析し、実験を通した学びのプロセスに関係する要素を抽出した。これまでに「花のつくり」「光合成」等についていくつかのポイントを見出しているが、来年度は、さらに検討する教材を増やして、学びのプロセスからみた教材間の関連性や系統性を検討していく予定である。(2)の実態調査については、中学1年生と大学生の「植物の葉のつき方」に関する認識を調査し、その特徴や傾向を分析した。中学生1年生については、多くの生徒が光の受け方との関連で葉のつき方を考えていたが、その推察から導かれる具体的な葉のつき方の表現は生徒によって異なることなどがわかった。なお、この研究は、(1)と(5)の研究と関連させながら実施しているものであり、カリキュラム研究、生徒の実態調査、教材開発を連携させながら進めている。(3)の教材開発は、生徒にとって身近な携帯電話の使用に関する安全教育の観点と、生物教育にけるヒトの反応の実験を関連づけて、主体的な問題解決を図ることを目指したものである。(4)は、小学校低学年から中学年を対象にした教材開発であり、動物園を学習の場として活用するためのデジタル教材を作成した。(5)は、教材開発から実践研究へと発展させたものであり、葉のつき方に関する野外調査の方法とつき方を表現するための教材を開発し、それを利用した学習における生徒の学びのプロセスを調査した。この成果は、日本生物教育学会第76回全国大会で発表した。
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