研究概要 |
中学校理科における「相対運動」概念は、天体運動の理解だけでなく、日常の様々な現象の理解に必要とされる重要な概念である。しかし、児童生徒にとって相対運動の理解は容易ではない。空間における物体間の相対的な位置関係を認識するためには、視点移動能力が不可欠だからである(松森ほか 1981a、川守 1995、荒井 2000)。本研究では、視点移動能力の育成を支援するストリーミング学習コンテンツの設計および開発を行った。 松森(1983)は、視点移動を機能的特質から、タイプIA(具体的かつ能動的視点移動)、タィプIB(具体的かつ受動的視点移動)、タイプIIA(心的かつ能動的視点移動)、タイプIIB(心的かつ受動的視点移動)に分類した。本研究では、松森(1983)の試作した視点移動の類型化のうち、具体的視点移動から心的視点移動への転換について、動画像やコンピュータグラフィックスを用いることでより効果的に支援できると考え,仮想的視点移動を新たに提案した。 コンテンツ開発においては,課題を与えその課題を遂行する際に視点移動を行うよう配慮した。仮想的かつ能動的視点移動を行う画面では,地球は自転し,月は自転しながら地球の周りを公転している様子がCGアニメーションでエンドレスに提示される.インターフェイスについては,ボタンによる視点の切り替え以外に,「宇宙遊泳」として,マウスを使って自由かつ滑らかに視点を移動できるよう工夫した.そして,インターネットを経由してこのコンテンツにアクセスできるよう,Webサーバを設置し,公開した。 次に,開発したコンテンツについて主観評価を行った。評価者は、教育学部生12名(教員養成課程1名、情報文化教育課程12名)、工学部生1名、計13名であった。評価項目は、インターフェイスに関する項目(操作性、見やすさ)とコンテンツの有用性とした。「教育に利用できるか」という質問に対して、13名中10名が中学校の教材として「非常にそう思う」「ややそう思う」と回答し、残り3名は「あまりそう思わない」という評価をした。自由記述め結果から、ダウンロードに時間がかかることが理由として挙げられていた。13名同時アクセス時にかかるサーバの負荷とネットワークのトラフィックについては、今後検討していく必要がある。
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