研究概要 |
本研究では,電磁波に関する環境教育として,数100MHz〜数GHz領域の電磁波の反射・透過・吸収現象に着目した,電磁波及びその環境の理解を援助する方法及び教材の検討を行っており,その中で,フェライト複合材電波吸収体を利用した電磁波の反射・透過・吸収実験の検討を行った.フェライト複合材電波吸収体については,ネットワークアナライザによりその電磁気特性の評価を行い,約10GHzで吸収特性を示すことを確認した.信号源には10.5GHzの搬送波に対し矩形波の変調をかけられる発信器を用い,ループアンテナで受信し,パソコン接続型オシロスコープにより観察を行った.絶縁体,金属,電波吸収体についてそれぞれ実験を行い,実際に反射,透過,吸収の様子を観察することができた.水を材料とした同様の実験では,誘電緩和現象による電磁波の吸収を観察することができた.これは電子レンジの誘電加熱の原理説明にも利用できると考える.実験では10.5GHzの電磁波を利用していることから,比較的波長が短く,広いスペースを必要としない.さらに,電磁環境を意識させる実験として,生活環境における電磁波の測定実験,導電性繊維混合ニットを用いた電磁波のシールド実験についての検討も行った. また,検討を行った教材を用い,高校生及び短期大学生に対し電磁環境に関する授業実践を行った.具体的な現象が見られること,電波吸収体や導電性繊維混合ニットなど新しい技術を実験材料として利用することで,電磁波の物理的性質の理解や電磁環境に対する意識を高められる.一方で,より実験を分かりやすくするための工夫が必要であり,今後改善すべき点についても得ることができた.
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