本研究では、科学系博物館学芸員の業務である「資料の収集・保存、調査・研究、展示、教育」が科学的な学習(探究・発表)の過程を体現していることに着目し、展示制作の過程を体験する科学学習支援者養成プログラムを開発している。養成した科学学習支援者について、科学系博物館及び研究協力校で科学学習支援を試行的に実施し、その効果の評価を進めている。 1.国内外の科学系博物館等における科学学習支援者(リエゾン)の導入状況、養成法、学校との連携状況について担当者への聞き取り調査、既存資料により調査、解析を行った。その結果、国内では科学学習支援者の養成に対する高い関心が明らかになったが、明確な養成法は確立されるには至っていない。 2.学校および科学系博物館間への科学学習支援者の導入について、学校のカリキュラムとの関連、課題を研究協力校と検討を行った。 3.建設・工事中の新館展示室の設計資料・画像をもとに科学学習支援者養成教材・資料を制作した。国立科学博物館の教育ボランティアグループ「変形菌」「足あと」「砂」「クモ」「たね」「冬芽」を対象に博物館活動に学ぶ科学学習支援者養成プログラムを試行し、アンケートにより博物館に対する理解、学習支援者としての資質の向上を調査し、開発したプログラムの効果を評価した。その結果、目的の明確化による学習意欲の向上、被験者の指導を行う研究者の役割が明確になった。加えて、科学学習支援者の養成過程における意識の変容と、指導者側の評価のズレについてモデル化を行った。 4.平成15年度・16年度に養成した科学学習支援者が科学系博物館で児童・生徒に対する学習支援を試行的に行った。さらに、博物館外の学校や団体の科学学習を支援するための教材の開発、プログラムの制作を進めた(平成17年度に実施予定)。
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