研究概要 |
本年度の研究実績は,次の通りである。一般に,カタカナ語は,外来語のみならず,和製英語や専門用語,その時代を反映する語彙(流行語)などでも数多く用いられている。今日の日本語環境ではカタカナ語の重要性が増大する傾向にある。そこで,本年度,研究代表者は,テキストマイニングの手法を用いて,日本語テキストデータベースの中からカタカナ語を抽出し,その使用頻度を自動的に集計するシステムを開発した。このシステムを用いて,大規模な語彙調査を実施し,日本語におけるカタカナ語の使用実態を明らかにした。具体的には,1993,1996年の朝日新聞の新聞記事フルテキストデータベースを対象に,発行年度別にカタカナ語の使用頻度表を作成し,日本語におけるカタカナ語の時代的変化やカタカナ語使用の特徴を分析した。 さらに,『第1回「外来語」言い換え案』(国立国語研究所 2003)に示されたカタカナ語62語について,1993年と1996年の新聞を対象に使用頻度を分析した。その結果,新聞での使用がなされていないカタカナ語は定着度が低いこと,「アクセス」や「コンセンサス」のように新聞での使用頻度が高いにもかかわらず,国民各層への定着度が低い語が存在すること,などが明らかになった。こうして得られた本年度の研究成果は,一般にカタカナ語へのなじみが薄いといわれている高齢者や日本語学習者に対する日本語理解への支援を行うために必要な基礎的資料となる。また,その資料は,カタカナ語に関する語彙習得支援環境を構築するために役立つものとなり得る。
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