研究概要 |
前年度では,携帯端末を利用し,学習に関する時系列的な変化のプロセスを調べた。その結果,適応的な変化過程を示していると考えられる学習者とそうでない学習者がみられ,内発-外発の動機づけ,自己効力感,学習時の不安感,持続性,学業ストレス対処方略,自己動機づけ方略などに違いがみられることが示唆された。また,携帯端末を利用した学習相談・学習支援に対するニーズの分析を試み,学習方略のあり方や動機づけのタイプなどの学習者特性によって支援ニーズには違いがみられることを明らかにした。これらに基づき,本年度は,ICTによる学習方略支援の方策を立案する手立てとして「ICTを活用した自己調整学習方略(ICT-SRLS)」尺度の構成を進め,ICT-SRLSが動機づけ,動機づけ予測因,学業成績とつながっていることを確かめた。以上の知見をふまえて,最終的には,短期大学生を対象に半期にわたり講義2科目と演習1科目を対象科目として携帯メールによる学習方略支援を実際に試み,事前と事後にインタヴューを行い,質的な検討を行った。支援に先立って,ICT-SRLSを実施し,それぞれの学習者特性を把握するようにした。また,事前インタヴューでは,学習不適応の問題を探るべく,学習上の悩みやニーズが明らかにされ,約3ヵ月の支援期間ののち,事後インタヴューでは,支援の効果と問題点について分析を行った。ICTと対面による支援のそれぞれの利点をうまく使い分けてゆくこと,学習アシスタントといったリソースをどのように配置するとよいか,学習方略支援を自己調整学習の成立につなげてゆくにはどのようなことが必要かといった点など,考察がなされた。
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