古糊は、原料となる小麦デンプン糊の貯蔵過程において微生物等から関与を受け、製造される。貯蔵過程にある糊には、糊貯蔵容器・貯蔵年数の違いにより容器内表面の菌膜形成や、糊塊の状態等に差が生じる。今年度は特に糊塊の表面と内部の相違の有無及び各容器における糊熟成に差異が生じる原因の追究を目的とし、主に微生物関与による分解生成物という側面から下記項目について測定、検討を行った。また、採取した糊試料は、容器に充填した糊の上に水を張り密封し、1年間貯蔵後毎年大寒の時期に開封し、菌膜等を除去し水の交換を行う方式で貯蔵されていたものであることから、糊上に張られていた水にも微生物の生成物が含まれていると考え、下記項目について測定、検討を行った。 【試料・方法】菌膜形成および貯蔵年数などの異なる23容器より、糊塊表面部及び内部から採取したものを試料とし、pH・水分・還元糖量・有機酸の測定を行った。また、その他同一時期に調製され同一場所で5年間の貯蔵を経た糊のうち糊塊の残存状態の良好な糊容器(No.34)と対照的な容器(No.35)から各々糊塊表面および内部から糊を採取、試料とし、上記項目に加え生菌数調査及び熱分析を行った。また、貯蔵過程にある58容器より糊上に張られている水の一部を採取、試料とし、pH・還元糖量・有機酸の測定を行った。 【結果及び考察】1容器中の糊塊表面および内部の差異は、水分、還元糖量、熱分析において確認された。同期間貯蔵の2容器間の糊試料の比較では、No.34からのみ乳酸菌が検出され相違が見られた。これら試料の有機酸分析ではNo.34より乳酸も主体的に検出され、生菌数調査を裏付ける結果となった。水試料中の有機酸の含有率に関しては酢酸と乳酸が主体となる試料が多く、特に乳酸については貯蔵中における菌膜形成との関連が推察されるが、今年度測定データについては、今後総合的により詳細に検討する予定である。
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