研究概要 |
本研究は,微小変位地形の解析に基づく内陸活断層の最新活動時期の解明と,津波堆積物に基づくプレート間地震の発生時期の解明を通して,東北日本における断層活動の時空間分布を明らかにし,島弧における断層の活動特性を検討することを目的としている。 内陸活断層については,今年度は会津盆地東縁断層帯を対象にして調査を行った。昨年度に新たに見出された会津若松の市街地を南北に横切って延びる微小変位地形は,2,5000分の1都市圏活断層図「若松」として地図化されて出版された。この微小変位地形を含め,会津盆地東縁断層帯を横切る断面測量を数地点で実施し,変形形態や変位量を明らかにした。 一方,津波に関する調査では,昨年度の予察的な調査に基づいて福島県浜通り地方の旧ラグーンにおいてハンディー・ジオスライサを用いて地層を抜き取り,津波堆積物を探し出した。相馬市山信田と小高町井田川の南北に約30km離れた2つの干拓された旧ラグーンを対象にして,それぞれ海岸線に直交する向きの側線を設け,それに沿って数カ所で試料を採取した。その結果,ラグーンの堆積物である腐植質の粘土層中に数枚の砂層がみられた。堆積構造の特徴や砂層中に含まれる貝殻や偽礫などから,この砂層が津波に伴って堆積したものであることが明らかとなった。また,堆積物の珪藻殻分析を実施したところ,津波を挟んで急激な堆積環境の変化が認められ,津波を起こした地震に伴って地殻変動が生じた可能性があることがわかった。
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