研究概要 |
本年度は、被害状況とその地域特性に関する考察および復旧・復興対策の検討を計画目標とした。11月および3月の現地調査では、特に地域特性を反映していると思われる台湾集集地震における仮設住宅の供給についてヒアリング、資料収集を行った。仮設住宅の供給は、わが国における震災復興対策でも重要な論点であり、台湾の事例は新しい視点となるからである。 台湾集集地震の特徴としては、仮設住宅の多様な供給主体があげられる。この地震では、約5,800戸の仮設住宅が建設されたが、行政による建設分は半数にみたず、宗教団体や民間団体など非行政機関が行った。行政側の利点としては、行政負担が大幅に軽減したことがあげられる。また被災者にとっては、建設過程で仮設住宅の住戸面積などを互いに競い合うなどの副次的効果もみられた。非行政機関が仮設住宅を建設した要因としては以下のような点がある。 (1)台湾の災害対応関係の法律において、仮設住宅供給の主体者に関する言及がなかったため、すべて行政が担うという認識が薄かった。 (2)台湾の宗教団体や民間団体は、震災以前から社会貢献への関心が高く、災害発生直後から被災自治体等へ支援施策としての需要調査を独自に行っていた。 (3)宗教団体や民間団体は、建築資材の調達から、運搬、建設作業に至るまで一連の作業について、自組織ネットワークを生かして行うことが可能であった。また一部の宗教団体には、海外支援として仮設住宅を供給する実績があった。 一方、問題点としては、複数の非行政機関と行政との間で建設場所や供給戸数について意見調整が十分に機能せず混乱した形跡がうかがえた。また台湾地域内における仮設住宅建築資材の生産能力は一定であったため、各機関からの要求に応えることができず、効率的に生産することができなかったことなどがあげられる。 これらの調査結果から、わが国において仮設住宅の多様な供給主体を考える際には、関連機関を調整する組織・体制構築や企業グループの有効活用等が検討すべき課題になると考える。
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