研究概要 |
本年度は、石英フィルター上に捕集された大気エアロゾル試料から水溶性有機化合物を超音波抽出し、キャピラリー電気泳動装置(CE)により試料中のカルボン酸濃度を定量する手法について検討を行った。エアロゾル試料には、韓国済州島、父島(小笠原諸島)および札幌で採取されたものを用いた。CEの検出系としては、紫外可視吸光検出器に加え、イオントラップ型質量分析計も使用した。その結果、フィルター試料中の酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等のカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸の検出に成功した。この内、グリコール酸等一部の有機酸は、ガスクロマトグラフ(GC)法では定量が困難な成分であるが、溶媒の濃縮処理が必要とされないCE法により定量が可能である事が確かめられた。一方、炭素数2のジカルボン酸であるシュウ酸は、測定に用いた電気泳動バッファのpH(〜5.6)では無機イオンとの移動度の差が小さく、ピークの重なりが見られた。このため、他の有機酸と比較して定量性が劣っており、定量性の向上には硫酸イオン等の脱塩処理が必要であると考えられる。炭素数3,4のジカルボン酸であるマロン酸、コハク酸等、GC法を用いた定量が可能な成分については、同一の試料についてGC法とCE法の双方の測定値を比較した結果、良好な一致を示した。 以上の測定法の検討に加え、大気中において気相と凝縮相(エアロゾル粒子)の両方に分配している半揮発性カルボン酸の捕集法に関する検討も行った。炭酸カリウム溶液を塗布したデニューダー管による気相カルボン酸の捕集効率は十分に高く、後段のフィルター捕集と組み合わせる事で、半揮発性カルボン酸のガス/粒子の分配比の測定が可能である事が確かめられた。
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