研究概要 |
西部北太平洋を中心とする北太平洋全域で採集された動物プランクトン試料について湿重量、乾燥重量、C, H, N量、灰分量、有機物重量およびカロリー量を測定し、各8単位間の関係式を求めた。いずれの単位間も両対数式で高有意な関係式を得ることができた(p<0.0001)。これまで動物プランクトンバイオマスは作業時間効率の観点より、その多くが1つの単位(湿重量が多い)でしか測定されていなかったが、本研究で得られた関係式を用いることによって他の単位で表示することができるようになり、海洋における物質循環にはたす動物プランクトンの役割をより正確かつ定量的に把握することが可能となった。 本研究において得られた動物プランクトン各単位間の関係式を他の海域(北大西洋、サルガッソー海)で報告されている関係式と比較したところ、炭素量が他の海域に比べて約1.5倍高いことが分かった。この関係式の海域差は、各海域に固有な動物プランクトン相の反映であると解釈できる。北太平洋亜寒帯域の動物プランクトン相に卓越する(バイオマスの60〜80%)大型かいあし類Neocalanus属は体内に脂質を蓄積する(C含有量は乾燥重量の50%を越える)ことが知られている。この主要動物プランクトンの高い脂質の蓄積が、北太平洋亜寒帯域において動物プランクトン炭素量が高い要因であると考えられる。このように動物プランクトン各単位間の関係式はそれぞれ海域間で固有の関係式を使用する必要があることがわかった。しかし、関係式の季節変化(動物プフンクトンの脂質蓄積には大きな季節変動がある)や、サンプル中に混入するデトライタスの影響については未だ評価できておらず、これらの影響についての評価は今後の課題として残っている。
|