研究概要 |
昨年度確立した試料減容化法及び試料採取法の信頼性を評価すると共に,本法を用いて降水中水銀濃度の計測を行い,基礎データを収集した。 信頼性の評価:降水に共存する各種成分について,降水中濃度あるいはその数〜数十倍程度であれば,水銀定量に影響を及ぼさないことを明らかにした。また実降水を用いた無機水銀及びメチル水銀の添加回収実験を行い,無機水銀はほぼ定量的に,メチル水銀は低回収率で捕集され,本法ではほぼ無機水銀量のみを定量できることを明らかにした。また,降水を親水性PTFEメンブレンフィルターでろ過することにより粒子態で存在する水銀を除去でき,降水中の全水銀(溶存態+粒子態)をろ過せずに,また溶存態水銀のみをろ過することにより定量し,それらを差し引くことで粒子態水銀量を見積もることができることを明らかにした。 降水中水銀濃度の計測:富山県富山市において2004年4月〜2005年2月の間,降水を不定期に採取し,水銀濃度を計測した。その結果,水銀濃度は2.7〜33.7ng/Lの範囲で不規則に変動していることを明らかにした。また,全水銀量に対する粒子態水銀量の比は,ほとんどのイベントにおいて0.5を越えており,中には0.9を越える場合もあることを見出した。今後,降水中水銀を形態別に採取・濃縮・保存・計測できる簡便かつ安価な技術を開発することにより,より精密な情報を収集することができると考えられる。 大気中水銀濃度の計測:降水採取期間において,大気中ガス態水銀も不定期に計測した。その結果,ガス態水銀濃度はほぼ一定の値を示しており,降水中水銀濃度との相関は認められなかった。この結果からも降水中の水銀濃度変動は大気に存在する粒子態水銀により支配されている可能性が示唆された。この点をより明確にするために,降水中水銀のみならず大気中水銀の簡便かつ安価な形態別計測技術の開発も望まれる。
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