新規代替フロン類が地球温暖化に与える影響の解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15710008
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 高橋 けんし 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (10303596)
• キーワード: 対流圏 / レーザー誘起蛍光法 / ラボ実験 / 代替フロン / 地球温暖化 / 大気化学 / OHラジカル / 大気寿命

研究概要

平成15年度は、アルデヒド化合物の大気化学反応や、N_2OやO_3等の温室効果気体の太陽光分解過程について詳細な研究を行った。アルデヒドは、代替フロンや揮発性有機物の光酸化反応の中間生成物として大気中で生成する。本研究では、スモッグチャンバー/フーリエ変換赤外分光法を用いて、イソブチルアルデヒド及びピバルアルデヒドと塩素原子との295Kにおける反応速度定数を、それぞれ(1.15±0.31)×10^<-10>、(1.33±0.25)×10^<-10>cm^3molecule^<-1>s^<-1>と決定した。また、これらアルデヒドと塩素原子との反応生成物であるアシル化合物は、大気中においてO_2により酸化されると考えられる。そこで、一時生成物のアシル化合物とO_2との反応に関してさらなる実験を行い、アルデヒドとClの反応からアシルが生成する生成分岐比を、それぞれのアルデヒドについて0.81±0.08、0.85±0.10と求めた。一方、N_2OおよびO_3の紫外光分解反応についても、新しい知見を得た。成層圏大気の窓領域(190-220nm)におけるN_2Oの光分解反応では、真空紫外レーザ誘起蛍光分光法により、電子基底窒素原子N(^4S)の生成を見出した。すなわち、N(^4S)+NOの生成チャネルが、成層圏における新しいNOのソースとして無視できないことを初めて定量的に示した。大気モデル計算により、成層圏オゾンの定常濃度が影響を受け、20-50kmの高度において、最大1%程度減少することが分かった。オゾンの光分解反応については、生成する電子励起酸素原子O(^1D)の量子収率を、光分解波長193-225nmにおいて測定した。その結果、NASA/JPL(米国航空宇宙局/ジェット推進研究所)が大気モデルに推奨している値(0.90)よりも、有意に小さな値であることが分かった。

研究成果

• [文献書誌] K.Takahashi et al.: "Vacuum ultraviolet laser-induced fluorescence detection of O(^1S) atom produced in the 193 nm photolysis of ozone"Journal of Physical Chemistry. A107(44). 9368-9373 (2003)
• [文献書誌] N.Taniguchi et al.: "Sensitivity studies of the recent new data on O(^1D) quantum yields in O_3 Hartley band photolysis in the stratosphere"Atmospheric Chemistry and Physics. 3. 2331-2352 (2003)
• [文献書誌] T.Nakayama et al.: "Quantum yield for N(^4S) production in the ultraviolet photolysis of N_2O"Journal of Geophysical Research. 108(D21). 4668(doi:10.1029/2003JD003709) (2003)
• [文献書誌] J.-P.Le Crane et al.: "Atmospheric chemistry of pivalaldehyde and Isobutyraldehyde : Kinetics and Mechanisms of Reactions with Cl atoms, Fate of (CH_3)_3CC(O) and (CH_3)_2CHC(O) Radicals, and Self Reaction Kinetics of(CH_3)_3CC(O)O_2 and (CH_3)_2CHC(O)O_2 Radicals"Journal of Physical Chemistry. A108(5). 795-805 (2004)
• [文献書誌] S.Nishida et al.: "Formation of O(^3P) atoms in the photolysis of N_2O at 193 nm and O(^3P) + N_2O product channel in the reaction of O(^1D) + N_2O"Journal of Physical Chemistry. A108(印刷中). (2004)
• [文献書誌] S.Nishida et al.: "Quantum yield for O(^1D) production from O_3 photolysis in the wavelength range of 193-225 nm"Journal of Physical Chemistry. A108(印刷中). (2004)