研究課題
今年度は主に以下の二項目を行った。1.宝島サンゴ試料の採取及び年輪解析:黒潮本流の東シナ海から太平洋への出口に当たる鹿児島県トカラ列島の南端に位置する宝島において、サンゴ群体の分布調査及び試料の採取を行った。試料は、宝島西岸の約100m沖の水深7m付近に存在する体高5mのハマサンゴ属のサンゴ群体で、頂部から3.5m深までを回収することができた。採取されたコアを研究室に持ち帰って、3mm厚に切り出し、軟X線撮影をしたところ、平均約7mm/年の成長速度であり、ほぼ500年の記録を保持していることがわかった。来年度以降、さらに残りの1.5mを回収することによって、全体で約.700年の海洋記録を復元できる可能性がある。また、頂部70cmについては、0.5mmごとに粉末試料の削り出し作業が終了した。2.与那国島サンゴ試料の同位体分析:2001年に与那国島北西岸沖100mの水深17mから採取された体高130cmのハマサンゴ群体について、90年分の炭素・酸素同位体比を分析した。本試料の平均成長速度は13mm/yであり、全体で90年の年輪を有していた。1999年から二年間サンゴ群体の隣に水温記録計を設置し、同期間の酸素同位体比結果から水温-酸素同位体比の関係式を構築したところ、これまでの研究とほぼ同じ傾き(酸素同位体比変化/水温変化)が得られた。この式を用いて、全90年分の酸素同位体比を水温に換算したところ、過去90年間で0.3℃の水温上昇があったことがわかった。全球平均表面海水温の上昇は過去100年間で約0.5度とされている。この違いは地域的特性のほかに本試料の採取地点は水深17mであり、表面海水温(SST)ではなく、表層海水温(SLT)を反映していることも要因として考えられる。さらに、2003年6月に石垣島で採取した体高4mのハマサンゴ群体について、コアカットと軟X線撮影を行い、年輪解析をしたところ、470年の年輪、8.5mm/年の成長速度を有していることがわかった。
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