火山活動に伴う地殻変動や人類の生産活動などによって環境中に放出される酸化還元指標物質のうち、比較的濃度変化の大きな成分である硫化物イオンとその金属化合物などの関連物質の測定と、その濃度変動によりそれぞれの活動様相の把握と将来の濃度変動の傾向の把握を目指した化学センサーの開発を行った。 本年度も、現有機器である現場型化学成分自動分析装置をベースにおき、深海で作動する分析装置の基礎検討を引き続き行った。まず、制御部のCPUなどを組み込む耐圧容器の外部処理を行い、耐触性の向上を図った。サンプルの高速吸入などを行うための駆動部を収納する油漬け被圧容器の設計も試みた。腐食対策のため、アクリル及びテフロン素材の使用や、アルミ素材の皮膜処理などに関して検討を行った。その後、東京大学生産技術研究所の耐圧試験水槽を用いて、加圧実験を行った結果、実際の使用に耐えうることを確認した。光ファイバを用いたセンシング手法に関して、肉厚のプラスティック製ファイバが圧力下での作動に良好であることを前年度までに確認したが、今年度はこのファイバの取り回し手法に関して設計改良を行い、より強固なセンシング手段を開発することに成功した。電気化学センサ部分の基礎検討も引き続き行った結果、約30秒に1データ程度の高速サンプリングを行うことが可能となった。本年度もサンプル中の溶存化学成分の濃度が高い領域である、沖縄トラフ、伊豆小笠原海域など海底熱水域から、比較的硫化物濃度の大きいサンプルを得る事に成功した。
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