滋賀県近江八幡市におけるカワウによる森林衰退被害のモニタリングを安定同位体と衛星画像解析というツールを用いて行った。本年度は昨年度に収集したサンプルの微量同位体分析(炭素、窒素)を行い、カワウの営巣に伴い、カワウ由来の窒素(非常に高い同位体比を持つ)が森林土壌にどのように供給され、分解を促進・制限しているかについての知見を得ることを目標とした。事実、窒素供給に伴い、分解は阻害されることが分かり、カワウ物質循環モデルの中で重要な意味を持つ、土壌分解のパラメーターについては大きな見直しが必要であることが示唆された。 GPSを用いた現場状況のGIS化を行った。現状では、本年度も衛星画像の撮影は行われなかったため、過去に撮影された(2000年)衛星画像を用いて、現状のマッピングを行い、同時に過去の衛星画像、航空写真とのマッチングを進行させた。植物の同位体比と現場環境の被害状況とは必ずしも合致していないところが散見され、来年度は、そのような場所での土壌、植生の調査、およびGISデータの精度向上を含めて、研究を行い、より詳細な被害状況のマッピングに向けて研究を行うことを予定している。 モデリングに関しては、上記の通り、重要なパラメーターについての変更を考慮に入れた改訂版を現在作成中であるが、まだ、植生の回復度合いが現状とは異なっており、モデルは実測よりもより早い成長(回復)を示している。この差については、現在異なるシミュレーションモデルを用いたキャリブレーションを進めており、モデル自体の問題であるか、それともまだ考慮されていない部分に窒素が吸着されているのか、といった点を来年度検討する予定である。
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