今年度は、ガスクロマトグラフ一式を購入し、ガスサンプルの分析環境を整えた後に野外観測を開始した。2003年8月から10月にかけて、東京都立大学構内をはじめとした数地点のゼニゴケ生育地で密閉チャンバー法を用いたメタンフラックスおよび地温・土壌水分などの環境要素の測定を行った。しかし、当初期待したようなメタンガスの吸収はいずれの地点においても得られず、西シベリアで観測されたような高いメタン吸収がおこるためには、土壌中の化学成分など何らかの条件が必要であると推察された。このため、現在は野外観測は1地点のみにしぼりこみ、室内実験の準備を行っているところである。次年度は、室内実験を中心に、ゼニゴケによるメタンガス吸収の発生条件に関して研究を行っていく予定である。 上記の野外観測のほかに、今年度はゼニゴケの生態学的な特性を知るために、生態学の分野で蘇苔類を専門としている研究者を訪ね、ゼニゴケの分類、生長サイクルなどについてお話を伺った。 また、メタンフラックスの測定方法である密閉チャンバー法に関する論文、ならびに本研究のきっかけとなった西シベリアのメタン吸収に関する論文を執筆し、いずれも国際学術雑誌に受理・印刷された。
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