研究概要 |
本年度は、氷河上の生物活動を定量するための衛星画像の解析方法を確立するため,昨年度に引き続き衛星画像の解析を行った.解析にあたっては,購入した画像解析アプリケーションをもちいておこなった.今年度は特に,赤い色素をもった雪氷藻類が大発生したにおこる赤雪という現象に焦点をあて,衛星画像で検出が可能かどうかを分析した.雪氷藻類が大発生した赤雪の雪面と藻類のない白い雪面では,反射スペクトルに大きな違いがあることが,申請者の過去の野外調査から明らかになっている.とくに赤雪面の反射スペクトルは,藻類のカロチノイド色素によって400-560nmが低くなることがわかっている.今回はSPOTのマルチスペクトル画像の中で,Band1(545nmとBand2(645nm)の反射率の比を使って,赤雪の検出を試みた.野外観測でのスペクトルデータを分析した結果,645/545nm反射率比は,赤雪では,1を超える値をとるのに対し,藻類のない雪面では1より小さい値をとることが明らかになった.夏に顕著な赤雪が現れることがわかっているアラスカのハーディング氷原を撮影したSPOT画像を分析した結果,Band2/Band1比が1を超える雪面と1より小さい雪面に分けられた.1を超える雪面はこれは赤雪の分布を示していると考えられる.この分析から,赤雪が南向き斜面よりも北向き斜面で顕著に現れているなどの,赤雪の分布を求めることができた.一方,中国の氷河の雪サンプルの不純物の分析を行った結果,中国の氷河では,他の地域の氷河に比べ氷河表面の不純物が多く,反射率が低いことが明らかになった.(下記,論文にて発表)この中国の不純物の検出もふくめて来年度もひきつづき,購入した世界各地の氷河で同様な分析を行う予定である.
|