社会的費用を含めたリサイクル政策の費用便益分析を行うために、本年度は主に(1)廃棄物処理に係る私的費用に関する基礎的文献やデータの収集・分析、(2)廃棄物処理施設の現地調査、(3)廃棄物処理施設設置に係る社会的費用の分析、の3つに取り組んだ。 (1)では、特に一般廃棄物処理に係る施設整備費と運営費に関するデータを収集した。 (2)では、秋田県大館市にある民間の廃棄物処理施設(産業廃棄物の中間処理施設・家電リサイクル施設・最終処分場)を訪問し、廃棄物処理業の実態調査を行った。 (3)では、昨年度までに行った一般市民へのアンケート調査(選択型実験)によるデータを用いて、1)回答者の個人属性を考慮した廃棄物処理施設設置の社会的評価、2)環境評価手法と住民審議手法を併用した広域処理施設の設置に関する社会的評価、について分析した。1)で特に注目したのは、廃棄物処分場を設置するに際しての、回答者の居住地の与える影響である。この分析で明らかにされた主な点は以下のとおりである。 ・都市部の住民は一般廃棄物処理の広域化によって自市町村以外の廃棄物が持ち込まれることに抵抗を示さないが、農村部の住民はそれに抵抗を示す。 ・すでに一般廃棄物処分場をもつ市町村の住民は、それをもたない市町村の住民よりも新たな処分場設置への抵抗が大きい。 2)では、施設内でのリサイクル率の上昇に対する住民の一定の評価が見られ、廃棄物処理施設にリサイクル機能を付加することで処理施設の社会的受容性が高まる可能性があることが示された。 なお、(3)の研究成果の一部については、環境経済・政策学会と廃棄物学会で報告するとともに、現在、学術論文誌へ投稿中である。
|