消費者に環境問題に関する知識を伝達したり環境管理を支援したりすることで、消費行動による環境影響を低減するために現在用いられているツールのひとつに環境家計簿がある。本研究ではまず日本の環境家計簿の収集とこれらに含まれる知識の収集、分類を行った。 生活スタイルや知識の量や質がそれぞれ異なる消費者の環境管理を支援するためには、消費者ごとの特徴に対応した情報提供が鍵となる。そこで環境家計簿を作成する際に対象者の特徴に応じたカスタマイズを行うこと、および継続的に消費者の環境管理を支援すること、これらを支援するための知識を蓄積していくことを目的としたアクティビティモデルをIDEF0機能モデリング手法を用いて構築した。このことにより、必要なデータベースの種類や個々のアクティビティ間の情報の流れが明確化された。IDEF0によるモデル化の際には、環境家計簿を市民に継続的に配布し、その結果を集計するとともにアンケートを実施することで実際に環境家計簿の修正を行ってきた自治体、および現在新たに環境家計簿を設計中の自治体にヒアリングを実施して得た知見を参考にした。 また、このアクティビティモデルに従って、収集した環境家計簿などを元にデータベースを実際に構築し、「都内在住、一人暮らしの理科系の大学生・大学院生」を対象としてカスタマイズした環境家計簿を作成した。この環境家計簿をモニターに1週間試験的に利用してもらい、さらにアンケートを行って構築したアクティビティモデルの検証や知識の収集を実行した。 本研究でここまでで得たアクティビティモデルを元に、個々の消費者にカスタマイズしたチェック項目や情報の記録、提供、共有といった機能を持つシステムを構築するためのさらに詳細な設計、特にLCAなどの既存の研究用データベースに含まれる情報と環境家計簿で提供する情報の対応、さらにはそれらの提示方法に関するモデルの精緻化が必要であり、次年度の課題として挙げられた。
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