本年度の結果は、次の通りである。 第一に、被験者への情報提供方法の研究を行う際に、話題とする財について調べた。初期段階では、森林による雨水貯留を想定していたが、現在の社会にとってより大きな争点である原子力発電についても検討を行った。このために、学術的な文献や諸団体の広報誌の収集を行った。また、発電所等の現地訪問を行うとともに、インターネットのホームページ上にみられる意見の整理も実施した。 第二に、東京工業大学の学生を対象に少人数による予備調査を行った。この調査では、詳細な面接を行うことにより、情報提供方法によって知識の伝わり方がどう変わるか、特徴的な点を抽出した。これにより、本調査の調査設計のための注意点を明らかにした。 第三に、CVM調査実施のための準備を行った。まず、質問方法の検討を行った。予備調査により、森林の保全政策や原子力発電所の稼働継続政策に対する支払意思額/受入補償額を直接尋ねたとしても、政策実施の有無による差異が明確に伝わらないことが明らかとなった。CVM調査の成功のためには、政策による変化の内容が被験者に理解されることが不可欠である。そこで、選択型のコンジョイント形式を採用する方がよいと判断された。この方法では、プロファイルという形で、さまざまな水準で政策を実施した場合の効果を提示し、好ましいものを被験者に選ばせる形となる。現在、この判断に基づき、第一回の調査実施に向けて準備中である。
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