研究概要 |
本年度は,特に,ドイツの容器包装廃棄物政策に関する新しい知見を得た。 従来の諸家による研究は,容器包装政令が制定されると共に,リサイクルシステムであるデュアル・システムが創設された1990年代以降のドイツの容器包装廃棄物政策の展開に焦点を当てたものがほとんどであった。しかし,世界的にも例をみない,1990年代以降の独創的なドイツの当該政策が,他国に先駆けて導入された要因を分析するためには,1970年代にさかのぼった研究が不可欠であることが,本研究を通じて明らかになった。そして,以下の知見が得られた。 ・ドイツでは,すでに1970年代後半に容器包装廃棄物減量化は政策課題となっており,連邦政府の課題設定(アジェンダ・セッティング)能力は高いといえる。しかし,1980年代半ばまでの制裁なしの自主的取り組みは,成果をあげなかったため,連邦政府は,直接規制の導入を検討し始めた。その結果制定されたのが,容器包装政令である。 ・現行のドイツの容器包装廃棄物政策は,直接規制,経済的手段,自主的取り組みからなるポリシー・ミックスである。多様な政策手段が組み合わされている理由は,70年代以来の容器包装業界による自主的取り組みの失敗をうけて直接規制が導入され,自主的取り組みはその規制の制約のもとでのみ機能するものとなったことと,直接規制及び自主的取り組みが失敗した場合の制裁が盛り込まれたことによる。 ・事業者による自主的取り組みであるデュアル・システムではグリューネ・プンクト制度が,関係事業者に対する半強制的な参加メカニズムとして機能している。このように,グリューネ・プンクト制度は,デュアル・システムの組織化を進めるうえでの重要な役割をも担っている。
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