容器包装廃棄物政策分野においては、わが国に比べ、ドイツでは環境保護団体等による政府案批判や対案の提示がみられる。その一方で、日本と同様にドイツにおいても、政策の推進阻止を目的とする、関係業界によるロビー活動が積極的におこなわれている。 そのような状況下で、本政策推進に関して注目に値するのは、1982年にたまたま環境政策担当の内務大臣に就任した超保守政治家フリードリッヒ・ツィマーマンが演じた役割である。ツィマーマンが容器包装廃棄物政策に果たした役割は、ドイツ本国においても言及されることはほとんどない。しかし、本研究では、1980年代の彼の着想が本政策の推進上で重要であったと位置付け、以下の知見を得た。 ツィマーマンは、特に、飲料容器への強制デポジット制度導入を目指したが、その背景にはバイエルンの伝統産業であるビール産業の保護という政治上の目的があった。デポジット制度導入に関するツィマーマンの提案は、1986年に改正された廃棄物法には盛り込まれなかったが、主要な改正箇所である同法14条において、政府が示す目標を産業界が達成できない場合には、政府が容器包装廃棄物に関する政令を制定できるようになった。そして、その後も容器包装廃棄物減量化の成果はあらわれなかったため、1991年に環境大臣テプファーによって容器包装政令が制定されることになった。さらに、ツィマーマンが目指したワンウェイ飲料容器に対する強制デポジット制度は、事業者側の政令不遵守時のいわば罰則として同政令に盛り込まれ、2003年より施行されている。すなわち、強制デポジット制度導入を核として事業者責任を問うたツィマーマンの試みは、1980年代には失敗に終わったものの、のちの容器包装政令において結実したということができる。 したがって、本研究より、ドイツにおける容器包装廃棄物政策の推進要因としては、1980年代の環境問題への世論の昂揚と緑の党の台頭のみならず、選出州の産業保護を意図していた環境担当大臣ツィマーマンの存在があることが明らかになった。
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