昨年度までに整備した緯度経度30分グリッドの気候、地理データを用いた世界の植物生産力の評価にもとづき、単位面積あたりの日射量と生産力の関係を調べ、その地理的分布を明らかにした。陸域植物生産のいわゆるリンデマン比は地球平均で0.29%であり、1970年代から行われたきた別の方法を用いた評価値と非常によく一致した。次に30分単位で緯度的な変化を分析したところ、植物生産力のパターンとは異なってリンデマン比は中緯度帯において極端に低く、低緯度帯と高緯度帯で高い値を示していた。このことは、中緯度帯の温帯落葉樹よりも高緯度帯の常緑針葉樹のほうが少ない太陽エネルギーを効率よく固定しているという実験結果とも整合性があり、植生によって太陽エネルギー利用効率が大きく異なることを意味している。一方で、利用効率の低い中緯度帯において多くの人口を抱え、今後もその伸びが予想されることから将来の土地利用形態に十分に注意を払う必要があるだろう。これらの成果についてはJ.Agirc.Meteorol.60:861-864に発表した。 以上の評価はすべて潜在的な植物生産力にもとづいたものであるが、現在の実際の森林面積は少なくなっている。この値をどう見積もるかによって、将来の食料生産が可能な面積や生産効率を求めることは大変難しい。したがって、目下農耕地のグリッドデータと簡単な食料生産モデルを用いて将来の地球の人口扶養力を求める研究を進めている。森林面積は人口増加とともに極端に減少し、とくに中緯度帯において深刻である。このことは将来に農耕地へ転用することが難しいということを意味しており、食料生産の拡大は面積の拡大によって生じさせることが事実上困難であると予想される。このシナリオにそって、最終年度には具体的な数値を提示したいと考えている。
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