研究課題
海草の生育には光が大きく影響していることが広く知られている。いっぽうで高等植物である海草類は海藻類と異なり根や地下茎を有する形態的特長が知られているにも関わらず、地下器官や底質環境に注目した知見は少ない。本年は海草コアマモ藻場の底質酸化還元環境の特徴を、干潟で同所的に存在する海藻オゴノリ藻場と比較しつつ、地下器官の有無という特徴の差が及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。コアマモ、オゴノリが藻場を形成している2基の干潟実験メソコスム水槽において、各藻場の被度が同程度になった時期の藻場および裸地の底質の酸化還元電位の測定を行った。事前調査でのコアマモ地下部構造の解析結果から、地下茎が存在する深度-3cm、存在しない深度-15cmを測定深度とした。また水槽間の環境による違いを除くために、それぞれの実験水槽の裸地における測定値をコントロールとし比較を行った。加えて深度別の電気伝導度(EC)、土壌硬度、有機物含量、間隙水中のpHの比較も行った。その結果、地下器官が存在するコアマモ藻場の-3cm層のみが裸地と比べ還元的な値を示した。また-3cm層のEC、土壌硬度、およびpHに関しては有意な差はみられなかったが、有機物含量はコアマモ藻場で高かった。コアマモ藻場の-3gm層でのみ還元的な値を示した要因として、地下茎の存在と有機物含有量に注目した。海草類の地下茎から酸素が放出される(Kaj Sand-Jensen et al.,1982)ため、有機物が多い根圏において好気性細菌の活性が高まり、有機物を分解する際に酸素を大量に消費すること、昨年までの成果で明らかにしていた地下器官による底質安定化機能によって底質の流動が少ないことから、根圏を還元的な状態にさせているものと考察した。
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日本水環境学会誌 28
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第39回日本水環境学会年会講演集
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