研究概要 |
水道水に含まれる塩素処理副生成物質の一つであり、変異原性および発がん性を有する3-chloro-4-(dichloromethyl)-5-hydroxy-2(5H)-furanoue (MX)の変異誘発機構を解明するために、MX-DNA付加体形成能について検討した。 DNAの構成成分である3種のデオキシヌクレオシドすなわち2'-deoxyguanosine、2'-deoxyadenosine、2'-deoxycytidineのそれぞれとMXをN,N-dimethylformamide中、室温および50℃で反応させた後、フォトダイオードアレイ検出器付HPLCで反応生成物の有無を調べた。その結果、各ヌクレオシドとMXの反応液で、それぞれを単独でインキュベーションした場合にはみられない新たなピークが検出された。また、これらのピーク面積は経時的に増加し、室温に比べ50℃では短時間で顕著な増加がみられた。 3種のデオキシヌクレオシドのうち2'-deoxycytidineとMXの反応で顕著な付加体の生成が観察されたのでこの反応系について詳細な検討を試みた。LC-MS分析により付加体と推定される物質の分子量は255であることがわかった。反応液をODS、続いて陽イオン交換のプレカラムで処理することにより付加体を濃縮し、さらにHPLCにより精製した後に^1H-NMRを測定した。構造の決定には至っていないが、2'-deoxycytidineのアミノ基に修飾を受けた付加体が生成しているものと予想された。 MXはGC→TAトランスバージョン変異を誘発することがすでに報告されている。よって本実験において2'-deoxycytidineとMXとの反応で検出された付加体が変異誘発に関与している可能性が示唆された。
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