マウス胎仔の主要器官形成期に放射線を照射すると、外表奇形が多発するが、その機序は明らかにされてはいない。rpsL遺伝子を突然変異検出のレポーター遺伝子として導入したトランスジェニックマウス(New HITECマウス)を用いて、放射線によりマウス胎仔個体内に誘発および固定される突然変異の頻度を解析し、外表奇形との関係を検討した。 器官形成期(胎齢9.5及び11.5日)のNew HITECマウス胎仔に^<137>Csγ線2Gyの全身照射を行い、胎齢18.5日目に外表奇形の多発する四肢(前指・後指)、尾からDNAを抽出しアッセイを行い、突然変異頻度を解析した。 胎齢9.5日照射の胎仔は尾の奇形が多く認められたが、前指・後指の奇形は見られなかった。胎齢11.5日照射の胎仔は尾の奇形が胎齢9.5日目よりも多く、前指の奇形も多発した。一方、より放射線のダメージを強く受けた結果と思われる胎内死亡は、胎齢9.5日照射で80%と多く認められたのに対して胎齢11.5日照射では10%であった。前指、後指、尾の放射線誘発の突然変異頻度はコントロール群の2-3倍で、胎齢9.5日と11.5日間、それぞれの部位間に有意差は認められなかった。放射線による外表奇形頻度と突然変異頻度の間にはっきりとした相関関係は見られなかった。突然変異のスペクトラム分析の結果は、胎齢9.5及び11.5日に放射線照射した胎仔の後指と尾では、自然発生頻度がそのまま増加していた。一方、前指では大きな欠失の頻度が増加していた。理由の一つとして、後指より前指が早く発生することが考えられた。New HITECマウスを用いた実験では、個体差によるばらつきが大きく、検出感度が低いことが問題であった。
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