本研究計画では、細胞抽出タンパク質を3次元的に分画し放射線応答に伴う変化を検出する。初年度は3次元分画条件の詳細な検討を行い、最終的に以下の結論に至った。 1次元目:液相等電点電気泳動。Invitrogen社のIEF fractionatorを使用。 2次元目:逆相系カラム。EMPORE社C2 cartridgeにApplied Biosystems社POROS oligo R1レジンをパックして使用。 3次元目:質量分析(ゲル電気泳動と質量分析計を併用)。 当初の計画では等電点による分画はキャピラリー電気泳動を使用する予定であったが、解析のスケールを大きくできる液相等電点電気泳動の採用に変更した。これにより2mgまで材料を増加させることができ、微量にしか存在しないタンパク質も解析対象とすることが可能となった。3次元目は質量分析であるが、予備的に簡便な分析型SDS-PAGEとゲル中染色もしくはウェスタンブロット法を採用することで全タンパク質、リン酸化タンパク質、アセチル化タンパク質などの検出を行なっている。その後に同じサンプルを分取型SDS-PAGEで処理して目的のタンパク質を単離し、四重極-飛行時間ハイブリッド型質量分析計による詳細な構造解析を行うことにした。本法ではプロファイリングを行った後にタンパク質をペプチドに分解することなく液中に単離することが可能である。単離したタンパク質を質量分析計にそのまま導入することでアミノ酸修飾による微細な質量変化も解析することができ、この点で非常に特色のある方法と考えている。上記各分画条件、分画間の繋ぎに関して多数の技術開発・改良を行い、それらについては順次論文発表および特許取得を予定している。
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