本年度は異なるサンプル間の3次元プロファイルを比較するために必要なデータ取得法及びその後の統計解析法の検討を行った。 本研究計画で開発した方法ではタンパク質は最初に液相等電点電気泳動で分画され、次に疎水性度での分画、最後に1次元SDS-PAGEにより分離される。従って、その3次元プロファイルはSDS-PAGEゲル上で複数のレーンが示すバンドパターンとして検出される。このパターンを分子量と濃度のデジタルな情報に変換するために、分子量及び濃度既知の分子量マーカーを用いた2段階内部標準法を導入した。2段階内部標準法では、分子量マーカー単独、分子量マーカー+測定試料、測定試料単独の3レーンを設定し、測定試料単独レーンでもレーン内で分子量と濃度の検量線を作成することを可能とする。尚、分子量マーカーは全タンパク質用とリン酸化タンパク質用の両者を目的に応じて使い分けている。デジタル情報に変換されたプロファイルはその後Phoretics社の1D Analysisソフトウェアのプログラムを用いてサンプル間における分子量マッチングを行うことにした。同一分子量として認識されたバンドは、その濃度数値を用いて各種統計解析ソフトにより変動比較を行うことが可能となる。 本法は特別に高額な装置を必要とせずに手軽に細胞内のタンパク質発現変動を解析することが可能である。細胞の放射線応答は照射線量ごとの経時的変化を捉えることがその全体像を把握するために必要であり、多数の試料を同時に処理して比較できる本法はその目的に適した方法である。
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