本研究の目的は、遺伝子の発現を人為的に抑制することによってそれらの遺伝子の機能を調べる方法として、近年新しく開発された手法であるRNA干渉法を利用して、目的とする癌関連遺伝子BRCA1および14-3-3σ遺伝子の発現を抑制することで、その細胞が相同組換え修復能あるいはG2/Mチェックポイントを喪失し、放射線高感受性になることを確認することである。 そこで、Elbashirらの方法を参考にして、ヒト正常乳腺由来細胞MCF10においてBRCA1または14-3-3σ遺伝子の発現を抑制できるdsRNAを作製した。その際、以下の点について検討を行った。 1.それぞれの遺伝子の発現抑制に有効なdsRNAの配列を検討するため、3種類ずつのdsRNAを合成して細胞に導入後、mRNAの発現レベルを調べたところ、それぞれ70〜90%の減少が認められた。 2.発現抑制に最適なdsRNAの導入濃度を検討したところ、100nMで導入した際に最も発現レベルの抑制が認められた。 3.細胞へのdsRNAの導入法を検討したところ、Oligofectamineを用いた導入法が最も適していた。 4.発現抑制の持続期間を測定した結果、導入後72時間で最も発現レベルの抑制が認められた。 5.各遺伝子の発現を抑制した細胞において、他の遺伝子発現がどのように変化しているかをマイクロアレイを用いて解析した。それぞれの遺伝子の発現を抑制した場合において、発現が抑制された遺伝子群および活性化された遺伝子群、また挙動が共通した遺伝子群に分類した。 6.各遺伝子をターゲッテイングした細胞に種々の線量の放射線を照射したところ、BRCA1および14-3-3σ遺伝子のどちらの場合でも発現を抑制した細胞は放射線に対して高感受性となっていることが明らかとなった。
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