研究概要 |
現在,有機塩素系農薬等による土壌・地下水汚染が深刻な社会的問題になっている。これら土壌汚染は汚染源である有機塩素化合物自身が高い毒性を有しなおかつ化学的に非常に安定であること,さらにこの有機物が土壌に強く吸着しているために,それらが大気中または溶液中に存在している時と比較して処理する上で難処理性が高い状態を有しているものと推測される。本研究では,超音波キャビテーション作用が有する物理および化学の両作用を最大限活かしつつ、不均一系における固体粒子からの汚染有機化合物の脱着,分解効率同時処理を目指す。 2年間の申請のうち、初年度に当たる本年度は、溶液中有機塩素系除草剤MCPA(4-クロロ-2-メチルフェノキシ酢酸)の基本的な分解挙動について検討を行った。周波数500kHz、有効出力38Wの超音波を100ppmのMCPA水溶液にアルゴン雰囲気下で照射したところ、照射時間180分でMCPAはすべて分解し、照射時間360分でMCPAの塩素基は塩素イオンの形で完全に脱離することがわかった。一方、この時点でのTOC(全有機炭素)除去率は約0.4の値を示した。MCPAの分解過程を調べたところ、4-クロロ-2-メチルフェノールのような中間生成物を経て,最終的には酢酸,蟻酸のような低級カルボン酸が主に残留していることが明らかとなった。 超音波強度およびMCPA水溶液の初期濃度依存性について検討を行った結果、同一時間では出力が高いほど、また溶液の初期濃度が低いほど、MCPA分解率,脱塩素率,TOC除去率が増加していることがわかった。また、酸素雰囲気とアルゴン雰囲気存在下で比較検討を行ったところ、MCPA分解速度、脱塩素速度および分解過程で生成する低級カルボン酸(蟻酸、酢酸)の生成速度に顕著な差異が認められた。
|