研究概要 |
石炭火力発電所から廃棄物として産出される石炭灰は,現状では大量に埋め立て処分されているが,電力事情から今後その量が世界規模で急増することが確実視されており,環境保全対策および有限な資源の有効利用の観点から,有効利用の拡大とそのための技術開発が急務の課題である。そこで,石炭灰をコンクリートに混入して鉄筋コンクリート(以下,RC)建物の構造材料として活用することが提案され,実用化に向けた研究が進められている。石炭灰の混入によって粒度分布性状が変化したコンクリートを用いたRC構造体では普通コンクリートの場合と異なる粘性減衰特性を示す可能性があるため,石炭灰を活用したRC建物の動的応答時における耐震安全性を保証するためには粘性減衰特性を把握・検証する必要がある。本研究は石炭灰を混入したコンクリートを用いたRC構造体の粘性減衰特性に焦点を絞り,その基礎性状を模型実験によって弾塑性領域にわたり定量的に把握・評価することを目的とする。具体的には,石炭灰の混入方法と破壊形式をパラメータとして,小規模RC造試験体を対象とした振動台による動的加振実験,そして同一仕様試験体の静的載荷実験を実施して,動的応答時における石炭灰混入の影響を実験結果の比較検討から抽出する。本年度は動的加振実験システムの構築および鋼製試験体を用いたパイロットテストを実施した。その結果から,本システムにより試験体の微小変形域から大変形域に至るまで変位,速度,加速度の各データを多点で同時かつ精密に計測できることを確認した。また,使用する振動台の性能を考慮して小型RC柱4本と剛床から成るテーブル状の試験体を設計し,本実験に向けた準備を整えた。
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