研究概要 |
21カ所の浄水場から水道水をサンプリングして変異原性を測定した結果、検出下限界値以下〜16,000net rev./Lの範囲であった。ただし、16,000net rev./Lの著しく高い値が観測された水道水は1カ所の浄水場のみであり、その値を除くと最高値は6,300net rev./Lとなり、10年前の最高値と比較して2,900net rev./L低い値であった。分布を比較するために累積度数分布を求めたところ、10年前の全国調査の結果よりも3,000'net rev./L以上のサンプルが減少し、今回の調査の方が変異原性が低く分布していることが明らかになった。また、原水の変異原性物質生成能(Mutagen Formation Potential, MFP)を測定した結果、検出下限界以下〜25,000net rev./Lの範囲であった。また、浄水処理工程における変異原性の平均削減率は65%であった。 変異原性が低かった理由を検討した結果、前回の調査より原水のCODが高いサンプリングポイントが数カ所存在したこと、水道水の単位炭素量あたりの変異原性(変異原性/TOC)に有意な差は認められないことから、変異原性が低かったのは高度浄水処理の導入が一つの理由と考えられる。 今回の調査で選定した浄水場で採用している浄水処理は、緩速濾過、急速濾過、活性炭処理、塩素消毒がほとんどで、その他には生物処理などが数カ所導入されているだけであった。また、活性炭処理を導入している浄水場の濾過方式はすべて急速濾過方式であった。そこで、緩速濾過、急速濾過、急速濾過+活性炭処理の3種類に浄水場を分類し、それぞれのTOC除去率と変異原性削減率との関係をプロットした。その結果、同じTOC除去率付近における変異原性削減率を比較すると、急速濾過に比べて緩速濾過の方が変異原性削減率が高かった。また、急速濾過に活性炭処理を組み合わせることにより、緩速濾過と同程度の変異原性削減率が得られることが明らかになった。
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