研究概要 |
ファイトレメディエーションを利用した窒素・リン除去における根圏生態系の役割を明らかにするために,水生植物(マコモ)を用い,微生物量・種の豊富な活性汚泥混合液中にマコモを設置した系(Run1)とマコモを設置しない系(Run2)を設定し,マコモと根圏における物質の動態と微生物相の変化について調べた。実験は4ヶ月間回分式で行い,汚泥中の炭素,窒素含有量,汚泥混合液のろ液中窒素・リン濃度,汚泥混合液中全菌数,原生動物数および微小後生動物数に着目した。その結果,以下のことが明らかになった。 ・実験の経過に伴い汚泥中の炭素含有率はRun1の方がRun2と比較して高くなった。このことから,マコモ根茎から有機物が供給されていることが明らかになった。 ・実験の経過に伴い,汚泥ろ液中のNH_4-N濃度および汚泥中窒素含有量はRun1のほうが小さくなり,Run2に対するRun1の割合は,最も差が大きいときでそれぞれ約10%,約60%であった。このことから,マコモの存在により根圏における液中の窒素濃度が低下するだけでなく,固形有機物の窒素含有量の減少か促進されることが明らかになった。 ・全菌数について,実験の経過に伴い差が見られた。すなわち,マコモのありの条件下ではRun2の条件下よりも1.2倍〜1.6倍多かった。 ・原生動物・後生動物の出現種・数が大きく異なった。とくに,肉質鞭毛虫綱,繊毛虫網膜口目,縁毛目,後生動物に違いが見られた。とくに,後生動物は,時間の経過に伴いRun1では出現したが,Run2ではほとんど出現しなかった。以上,マコモの根圏ではマコモ根茎からの有機物の供給や窒素吸収が非常に活発であること,またそのことは根圏微生物相に大きく影響を及ぼすことが明らかになった。
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