研究概要 |
本研究では,根圏付近の植物,細菌,原生動物,後生動物の生物学的環境とその周辺部の物理化学的環境,および根茎から分泌される物質を根圏生態系とみなし,根圏生態系における汚染物質除去機構を明らかにし,さらに得られた知見を多くの人が利用できるインターネットで情報化することを目的としている。一方,根圏微生物の多くは根茎の周囲に形成された生物膜内部や根茎内部に存在しており,そのままでは観察や同定が容易でないこと,また分離培養が困難な微生物が圧倒的に多いといったことから,水生植物の根圏を構成する微生物相やそれらの機能は未解明の部分が多い。そこで,水生植物の根圏微生物相検索に適した手法の検討を行った。具体的には,試料の前処理方法について超音波破砕処理と攪拌機による分散処理を比較し,さらに近年環境中の微生物の検索に利用されてきているPCR-DGGE法およびFISH法の適用を試みた。その結果,以下のことが明らかになった。 1)マコモ根茎付着生物膜を,生物膜の剥離および分散方法を検討した結果,超音波破砕を行うよりも試験管ミキサーによる攪拌の方が,FISH法に適用しやすいことがわかった。 2)原生動物・後生動物は超音波破砕法では細胞が破砕されてしまうため,超音波破砕機による処理は適さないことが示された。 3)マコモ根茎付着細菌相を調べるため,PCR-DGGE法を試みた。変性剤濃度15%〜55%で200V,4時間泳動を行った場合,マコモ根茎の試料においてバンドが複数本確認されたことから,マコモ根茎付近は,数種類の細菌によって構成されていること,さらに,マコモ根茎付近に硝化細菌が存在する可能性が示された。 4)マコモ根茎付着生物膜中に頻繁に観察される微小動物を動画により記録した。また,原生動物Aspidisca sp.や後生動物Philodina sp.の分離・培養に成功した。
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